――こんばんは、再び古河大地です。 俺の仕事、さっき終わったはずだったんですけどねぇ。宮本さんはいったい何やってんでしょう? 『ナルニア』読みふけってるんでしょうか。なんだか新しい『リファレンス指令』が隊長……じゃなくて瀬戸女史から来て――ってなんで俺んとこ来るんですよ!? 此処でバイトしてんのは宮本さんでしょ。困ったなぁ。俺の分野じゃないしなぁ……まぁ仕事なんすからね、本来の担当に戻すことにしましょう。 |
>開かずの部屋(一部、開室中)へ行く古河 |
古河: | おぅい、宮本さん……入りますよ。 |
宮本: | おう。……これ、なかなか旨いワインじゃねーか。どこで手に入れた? |
古河: | あぁ、さっきのアレですか? ガニメデ産の著名柄ですって。あんたガニメデに住んでたんじゃなかったでしたっけ? |
宮本: | 食い物のブランドなんか知らねぇし、だいたいガニメデでワインなんぞ獲れるってのが不思議だわな。あれは太陽系第三惑星・わが地球に太陽が与えてくれる恵みってやつだぞ? |
古河: | なに大時代なこと言ってんですか。……それより、これ。 |
宮本: | ん? |
古河: | 顔逸らさなくてもいいじゃないですか。 |
宮本: | それ、こっちにもちゃんと来てるさ。 |
古河: | じゃ、なんで俺んとこ。 |
宮本: | 俺がオペラなんぞ、わかるわけねーだろ!? |
古河: | じゃ、何で担当してんですよ。 |
宮本: | 某Aの陰謀に決まってるじゃねーか。 |
古河: | でも、知らないものは紹介しようが無いでしょ? |
宮本: | 知らないんなら知ってるやつに頼め、とさ。 |
古河: | 俺っすか? |
宮本: | ……おめ、わかんね? |
古河: | わかるわけないしょ。――あ゛〜! 佐々とか引っ張り出そうと思ってません? |
宮本: | おお! その手があったか。 |
古河: | (白々しいです……) |
佐々: | なにぐだぐだ言ってんのさ。――気づいたらこんなとこ来ちまったわ。宮本さんも、元気そうじゃないか。 |
宮本: | よお。おめーもな。加藤(四郎)は元気か? |
古河: | (10年ぶりに宇宙の果てで逢って、そういう平然とした挨拶出来るとこが、わかんねー人たちですよ、まったく)……佐々さん。自己紹介、してください。 |
佐々: | 自己紹介? 誰の? 何のために!? |
古河: | ここの読者の皆さんに、貴女が誰か知っていただくためにですよ。 |
佐々: | は? ……興味がある人は、此処(>「宙虎シリーズ」)見といて。…ん? 一言!? え〜と。こほん。古河の上官で愛人です(嘘) |
古河: | よ、よよよ〜こさん、何っ!! |
佐々: | ぎゃはは。…焦るなよ、冗談だろ、冗談。 |
宮本: | 佐々もそんなジョーク言うんだな。見直したよ、わはは。 |
佐々: | 宮本さん!? あんた辺境でバイトしてるって噂、本当だったんだね。あんたに本って似合わないけど――まぁいいか。で、あたし何のために呼ばれたわけ? |
古河: | 佐々さぁん、随分俺と態度が違うじゃないですかっ。やっぱあんた宮本さんと何か…。 |
佐々: | うっさい。話が進まないじゃないか。 |
宮本: | ほい、ファイルだ。 |
佐々: | ……。 |
あたしだってオペラのことなんざわかんないよ。あぁでもこれなら。 |
『ヘンゼルとグレーテル』――グリム童話だよね。 |
「Hänsel und Gretel」 |
エンゲルベルト・フンパーディンク作曲。台本は実妹のアーデルハイト・ヴェッテ。ふふ、アーデルハイトって「ハイジ」の本名だね。ドイツ語圏にはよくある名前なのかなぁ? |
全3幕のオペラで、1893年にヴァイマール(Weimar:当時のドイツ・テューリンゲン州の州都)で初演された。 クリスマスの話だからかな、12月23日に初演されていて、それ以降、ドイツでは親子でクリスマス・シーズンに観に行くオペラの代表ともいえる作品です。 われわれの国ではあまり“子ども向けオペラ”という印象はないね、そういう風に紹介されなかったこともあっただろうし、本当に上手い子役なんか育つ環境じゃなかった所為か、大人大人した演出で上演しても親近感は沸きにくかったんじゃないか。それに、親子でオペラを観に行く、という習慣そのものがあんまりなかったのかもしれない。 ただし、この「序曲」だけはよく演奏されている。プロの楽団が取り上げたり、20世紀後半くらいからはアマチュアでも演奏する処が増えた。なかなかの名曲で、いろんな楽器の活躍する部分があって、物語のシーンが目に浮かぶような序曲だよ。 私もオペラの全幕は見たことがないなぁ。だけど曲は何回か聴いている。 |
原作は、貧窮からくる子ども遺棄の話がベースになっている(世界各国にある)ことといろいろな残酷さが容赦ないためとか、オペラという形式の都合上、いくつか異なる設定がされたらしい。まずヘンゼル(兄)とグレーテル(妹)の両親に名前がある。父・ペーターは箒職人で母の名はゲルトルートだ。仕事を手伝わずに遊んでいて母に叱られ、唯一の食糧だった牛乳瓶を割って、せめていちごを摘んで来いと森に追いやられる、というストーリーになる。原作では貧しさのあまり両親(実母)が子どもたちを森に捨てにいく話なので、まったく違う。 |
この“遊んでいる”シーンで歌われる兄妹の二重唱は有名。劇中に何度か同じ旋律が出てくる。 |
森の魔女も、ここでは「お菓子の魔女」ということになっていて、多少ひょうきんな感じ。 |
二幕では森で迷う子どもたち。原作にはない「眠りの精」「露の精」が出てきて、子どもたちを眠らせたり起こしたりする。眠りの精には秀逸なアリアもあるし、なかなか良い役だ。 |
三幕はお菓子の家に囚われた子どもたちと魔女とのやり取り。最後には魔女を退治して家に帰り、めでたしめでたし、という話。 |
1つだけDVDを紹介しておく。…言っとくけど、別にこれが「一番良い」っていうお勧めじゃないよ。とりあえずは、「ウィーン・フィル」だし「ウィーン少年合唱団」だし、ということで入りやすいかもね、ということで。お値段もまぁまぁだし。 |
1980年の録音だから、相当古いですけどね。配役がものすごいです。 |
演奏/指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ、管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、合唱:ウィーン少年合唱団 |
キャスト/ヘンゼル:ブリギッテ・ファスベンダー、グレーテル:エディタ・グルベローヴァ、父親:ヘルマン・プライ、母親:ヘルガ・デルネッシュ、魔女:セーナ・ユリナッチ、眠りの精:ノーマ・バロウズ、暁の精:エルフリーデ・ヘーバルト |
演出/アウグスト・エヴァーディング |
オペラの方じゃないんだけれど、私は原作を最初に読んだ時に、「貧しくて食えないから子どもを捨てにいったのに、帰ってきてどうするんだろう?」と、子ども心に最初に思ったんだよ。元が民話だから、それに対してはいろいろなストーリーがあって、魔女の家には財宝があってそれを売って一家が潤った、というようになっているものもあれば、貧しくても力を合わせてなんとかしよう、という気合のもの、何も記述されてないもの、などいろいろあった。 |
お菓子の家も、これはドイツでいうヘキセンハウスとされているけど、原作では壁がレープクーヘン(ドイツの焼き菓子)、窓が透き通った砂糖、屋根は雑多な菓子類、となっているらしい。 |
一応、原作本の方の紹介もしておく。 |
グリム童話集II 『ヘンゼルとグレーテル』 |
(表題作ほか21編を収蔵) |
◆グリム兄弟(ヤーコプ・グリム(1785-1863)、ヴィルヘイム・グリム(1786-1859)):著/植田敏郎:訳 |
◆新潮文庫/1967.12.10/460円/ISBN978-4-10-208302-4 |
――こんなんで、いいの? | |
宮本: | おう、終わったか? |
佐々: | えへへ。とりあえず、紹介してみましたってことで。 |
古河: | お疲れさまです。たいへん結構でした……って俺、何の関係もねーし実は。 |
宮本: | 関係ねぇ? 冷てーじゃねぇか、古河。せっかく佐々が教養高くご紹介くださったんだから、だ。このDVDでも見ながら酒飲もう、酒。 |
佐々: | ん〜っ、もう。次からは山本(明)か誰か招んでよね、歌舞音曲方面は。 |
宮本: | あぁ、そうさせてもらう。…考えてみりゃぁ最初っから山本呼べばよかったんだよな。 |
佐々: | あいつが素直に来るかどうかは別として。 |
古河: | 山本さん――逢いたいっすけどねぇ。いったい何処飛んでいってんだか。 |
佐々: | う〜ん、、、今っころ記憶無くして時空の彼方、っていう時期だからな。無理かも(ぼそ) |
古河: | 記憶なくしてぇ? 何の話、それ。 |
佐々: | Shingetsuワールドでも読みたまえ(>該当ブツ)。→どうしましょうかねぇ>当該ブツ 現在、Upされていません。近いところで此処かなぁ。 ・・・「傷跡」か「蒼き空から…」がどっかに上がってたような気がするんだが(<をい<自分) |
古河: | そ、そんなぁ。山本さぁん(泣) |
佐々: | あんた、そんなに山本が好きだったの? |
古河: | え゛。 |
宮本: | 佐々、それ誤解の元。あいつの趣味、知ってんだろ。 |
古河: | ――ち、ちがいますよぅ。ほんとに、誤解です。 |
佐々: | 何赤くなってんだ、古河。ますますアヤシい。 |
宮本: | まぁそのうち俺が呼んでやっから。Xmasなんだからな、どこの宇宙だろうと戦いは休戦だよ。 |
古河: | そんな平和な話があるもんですか。 |
宮本: | そうだよなぁ……でも、あるといいよな。 |
佐々: | とりあえず、私たちだけでも、酒飲も、酒。 |
古河: | それ目当てだったんでしょ? 美味しいガニメデ・ワインがありますよ。 |
(13 Dec, 2009) |