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Xmas a la carte

NARNIA

――こんにちは、古河大地ふるかわだいちです。

俺は元ヤマトの艦載機隊員(ただし下っ端)ですが、現在は戦艦アクエリアスというふねに乗っています。古代進が艦長です。
……ただしこれは、某ワールドでの話。実際には古代さんは地球にいたか周辺艦隊でウロウロしていたようですね。2117年あたりからは軍も辞めてしまって辺境に出ていたらしい
……って、こっちのワールドでは俺はどうなっちまってるんだろうなぁ? どうなんですか!?>作者某A

宮本:何ぐでぐで言ってんだ、古河。あっちはあっち、こっちはこっち、でいいじゃねーか。
古河:あ、宮本さん。……あんたいったいこんなところで何してんですかっ。それに若返ってるし。
宮本:いいんだ。ここは時空の果て、ブラックホールの彼方だよ。心配したようなカスケード・ブラックホールの向こう側の異次元世界じゃないらしいから、俺たちがエネルギー素材になっちまうことはなさそうだがな。
古河:ぶるぶる。怖ぇぇこと言わないでくださいよ。10年経ってもあんた、相変わらずですね。お元気でしたか。
宮本:おうよ。ちょいとドジやっちまってな。今、ここの瀬戸さんというきれーで怖ぇお姉さんにコキ使われてるさ。
古河:ぶぷふっ。
宮本:なぁんだよ?
古河:“綺麗で怖いお姉さん”って、得意じゃないですか。……モロ好みでしょ。
宮本:阿呆っ! あの人はなぁ、××さんの▲▲だぞっ。手なんぞ出したらそれこそ波動砲逆回転させて宇宙の彼方まで吹き飛ばされちまわぁっ。
古河:へ? ××さんの▲▲なんですか??? おお、そりゃ気をつけねば。
宮本:お前はそうやってカワイこぶってろ。十分、弟分で通るさ。
古河:そりゃいまさらムリってもんです……ところで。そんな話をするために出てきたわけじゃないんです。
宮本:おう、さっき落っこってきたから、じゃねーのか。
古河:ちがいますって! 古書の話してたでしょ。
宮本:古書? あん? まぁここは図書館だからな。本の話くらいすらぁな。
古河:――宮本さん。あんた何のためにここにいるんですかっ。

けほん。
まぁ、莫迦と無教養は放っておきましょう。
……ということで、私、古河大地が『ナルニア国物語』についてご説明いたします。とりあえず日本語版でよいですかね。
 
ナルニア国物語 1『ライオンと魔女』
□ C.S.ルイス(1898-1963):著/ポーリン・ベインズ(1922-2008):イラスト、瀬田貞二:訳
□岩波書店/1966年改訂新版(カラー版2005.5.26) 本文236p/1,300円+税 ISBN4-00-116371-3 C8397
 英国では1950年から56年にかけて出版されました。ペーパーバックスで読めると思いますが(ちなみに、某Aは語学は全然ダメのヒトですが、俺は英語はOKです、なにせパイロットですからね。なのでこのへんは原書も読みました。イギリス中世文学にハマったのもその所為かもしれません…ってこういうこと言うの恥ずかしいんだぞ、このやろ)。
内容に入る前に、ルイスについて少し……オックスフォード大学で勉学を修めの英語学の教授でしたが、ケンブリッジに移ってます。親交があり途中仲たがいしたりもしましたが親友ともいえる存在だった人に『指輪物語』の作者だったJ.R.R.トールキンがいますね。トールキンは英語学の先生だったわけですが、ルイスは中世ルネッサンスの英文学を教えていたようです。作家は副業なんですねぇ。
 ナルニアはファンタジーとして一級の作品ですが、ある目的を持って書かれているため、そういう風に読むと抵抗のある人も多いかもしれません。私は中世の騎士道とかにハマっていた時代に見つけて読んだのですが、そういった意味では古来英国の文学作品は“アーサー王伝説”とは切っても切れない関係にありますね。
 ルイスは神学者でもあり(一時期、無神論にも走ったようですが)宗教的な作品やエッセイも随分書いています。“ナルニア”は全7巻で、架空の世界の創造から滅亡までが描かれる壮大な物語です。もちろんルイスはこれをキリスト教者的視点から書いていて、『魔術師のおい』で作られた無垢の世界に人間の子どもたちが悪を持ち込む処から、象徴として使われているリンゴ、善と悪との戦い、神への不信の時代を経てさらに『さいごの戦い』で最後の審判・第三の天へ、というまでが描かれます。
 アスランというライオンが何を象徴しているかは明らかですが、宗教的な話がキラいな人でも冒険ファンタジーとしてワクワク読めます。だから日本でも人気抜群でした。某Aは小学生の頃にこれを読んで、物書きになろうと思ったそうですよ。(無謀だって。これの第8巻を書こうとした、というのが“二次小説”ぽいものに手を出した最初だというから、さらに無謀ですね。)
 この7巻は年代順に出ているわけではなく、ナルニア創世記の『魔術師のおい』は第6巻となっていて、そこで謎が明かされることになっています。第1巻から読むことがお勧めで、ちょっとしたミステリ気分も楽しめます。(衣裳ダンスの謎とかね)
 さて、何がXmasかというと、第1巻『ライオンと魔女』で、ペベンシー家の4人の兄弟たち(長男:ピーター、長女:スーザン、次男:エドマンド、次女:ルーシー)が第二次世界大戦で疎開して叔父のカーク博士の処へやってきたところから始まります。実はこのカーク博士、自身もナルニア経験者なのですが、世間的には変人の偉い人、ということになっている。ナルニアのリンゴの樹から作られた衣裳ダンスの扉を開けて中へ入ると、そこは永遠に閉ざされた冬の世界――だったというわけです。
 この「冬」を治めているのが“白い魔女”で、この「魔女」は、全編を通じて、人間世界で言うところの「悪」の役割を果たします。白い魔女はなかなか魅力的なキャラで、映画版では物凄く素敵でした。いや、そうじゃなければ人は悪に誘いこまれたりしませんよね。
 そうして、ナルニアののんびりした住人たち(ビーバーやあらい熊、リスやフォーン、ねずみや馬や小人たち)が嘆くことには、「冬なのにクリスマスが来ない」。クリスマスというのはどうやら“喜びの力”で、アスランのしもべか先払いの役割のようなので、魔女の力をもってして追い出している、というわけです。ネタバレしまくりですが、後半でXmasが出てきます。ウラギリモノの次男・エドマンドが魔女と小人に連れられて川べりを歩くシーンです。
 Xmasの象徴としてサンタ・クロースが登場します。ですがこのサンタさんは、お髭のニコニコしたカーネル・サンダースみたいなオジさん、ではなく、正しく聖ニコラウスの感じです。厳かで、明るく喜ばしく、子どもたちに大切なプレゼントを呉れます。そのプレゼントは子ども向けのオモチャでも、与えられた褒美でもありません。それを持って正しいもののために戦う勇気があるかどうか、試されるものだったりするんですね。
 と、私は読み取りましたが、皆さん、いかがでしょう。
 このクリスマスのシーンは、中でも感動する場面です。ぜひ一度、通読してみてください。
 “ナルニア”は映画にもなり、皆さんの時空でいう2009年現在も制作が続けられています。私も2作は見ましたが、まぁディズニー映画ですねぇ、善くも悪くも。
第1章『ライオンと魔女』が2005年に、第2章『カスピアン王子のつのぶえ』が2008年に上映されました(米国映画)。
私は『カスピアン王子のつのぶえ』の方が面白かったです。……しかし大昔の戦闘というのはなかなか面白いものですね、基本は今も変わっていないなぁなんて思いますよ。
 ちなみに、新書版でも出ています。子ども向けの装丁ではありますが、中身は十分面白いと思うので、ぜひ、これを機会にお読みください。感想文なんかもらえると、私と宮本さんとで読ませていただきます。ではまた。
――ふぅ。長い科白をしゃべると疲れるなぁ。
宮本:おう、終わったか?
古河:またぁ。終わった頃、出てくるんじゃありませんよ。まったくもう。
宮本:いいじゃねーか。お前ぇ、前は先生もやってたんだろ?
古河:訓練学校の教官は読書のリファレンスなんぞ、しませんっ。
宮本:そーいうもんかな。まぁいいじゃねーか。……で、面白そうだから俺も読む。
古河:暇なんですね?
宮本:……あぁ、ひま。だってよぉ、本読んでるのなら怒らないんだけど、なぁんもしないで酒飲んでると怖ぇんだもん、あのおねーさん。
古河:当たり前でしょっ! バイト代分くらいは働かないと。
宮本:…ん、まぁなぁ。てことで、本くれ、本。
…… to be continued ……

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