地球連邦図書館 宇宙の果て分室 BOOKFAIR No.4

勝手にお誕生日お祝いPROJECT

   真田志郎 七変化



銀ライン
『復活篇』 2010.12.12劇場公開

[cv. 青野武] 地球連邦宇宙科学局長官

2220年(48歳)。ブラックホールの接近を観測。
新たな危機から地球を守るため、17年前に自沈
したヤマトを新装、復活させた。(パンフレットより)


Illustrated by Jay
銀ライン


舵アイコン 英雄の丘で −地球に残った理由を考えてみた−
  written by pothos


――真田さん。
どうしても誘惑に勝てなかったのね?
ブラックホールの向こう側へ行ってみたかったんでしょう。

2009年11月に行われた試写会の後、私はまずそう思った。

今までどんな困難に遭おうと、真田志郎は決して逃げなかった。
これはヤマトの乗組員全員に言えることで、何も真田さんに限ったことではないが、彼がどんな場合に於いても諦めることを選択しなかったのは、周知の事実である。
例えば、あの宇宙要塞で自分の手足を爆弾がわりに使った時も、白色彗星帝国を前に降伏を覚悟したときも。それでも、尚、生きる望みを捨てることはしなかった。
彼の名台詞として語られる「こんなこともあろうかと」とは、彼の科学者としての優秀さを表すだけでなく、彼の生への執着を示すものでもあると考えられる。

それが『復活篇』ではあの場面で、地球に残った。
心底、驚いた。
まさか、彼が地球に残るとは、欠片も考えたことがなかったのだ。

あの英雄の丘にはね、秘密の部屋があるの。そこで真田さんは電脳オペレーターズを指揮して、ブラックホールに挑むのよ♪

一番簡単に思いついたのは、これ。
うん。充分に有り得るとは思う。
あれだけ異星から攻撃を受け続けたのだから、もしもの場合を想定して、少人数でも(たとえ一人でも)戦えるだけのシステムを構築している可能性は大きい。
それは、奇想天外でも夢物語でも、妄想でもないと思う。

だがしかし。
ならば、それを誰かに告げて、連携をとるはず。
生存の確率がかなり低かったとしても、自分で何かを“持って”いるのなら、それを秘密にしておくのは得策ではない。

だが、真田志郎は誰にも告げなかった。
DVDを見直していないので、島次郎に語った正確な台詞はわからないが、それに関することは喋っていなかったはずだ。
つまり、彼はあの時点で武器にできるほどの“何か”を手にしていたわけではなかった、のだと思う。

それでも残ったのは、何故か?

地球と運命を共にしたかった?
地球という惑星を見捨てることができなかった?

戦うことを諦めた?
星と共に眠りに就くことを望んだ?

いいや。それは絶対にあり得ない。それでは、真田志郎が真田志郎ではなくなってしまう。

では、何故か?
私は、長いこと考え、一つの結論に辿り着いた。

彼は、自分自身を武器として、自身が地球に残ることで、なにがしかの可能性を見出そうとしていたのだと思う。

もしかしたら、古代進が見抜いたように、真田志郎もまたあのブラックホールが人工のものである可能性を考えたのではなかろうか。
人工のものならば。
“あちら側”があるかもしれない。
いや、なかったとしても、誰かの考え出したものならば、それに対抗できる術を見出すことができるかもしれない。
対抗でき得るだけの確実な武器を持たずとも、己れ自身を武器として、その可能性を信じた。
可能性は0ではない。

可能性に賭けた、のではないと思う。
可能性を信じた、のだと思う。

私は、真田さんのあの行動を“自殺”だとは思わない。
また、運命に身を委ねたわけでもなく。
彼は自分自身を信じ、戦い生き抜くであろう仲間を信じ、生き残るためのでき得る限りの行動をしたのだ。
私はそうなのだと考え、納得した。

やはり、真田志郎は真田志郎であったのだ、と。

「こんなこともあろうかと思ってね」
誰もいない部屋の中で、不敵に微笑む技師長が見えたような気がした。

Jayさまの描いてくださった真田志郎は、私にはそんな風に見えた。

Jayさま。
素敵な真田さんをありがとうございました。m(_ _)m

16JULY 2010
written by pothos


(20100720_70)
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