ぐおん、ぐおんという音が足の下から伝わってくる。慣れてしまえば気にならないほどの振動だが、その気になれば耳を澄ませなくとも伝わってくる、彼女たち戦艦乗りにとっては地の鼓動のような音だ。これに包まれているとホッとするのは、何故だろう……いつの間にかそうなった。
「よぉ」
ぽん、と肩を叩かれて佐々葉子が我に返ると、振り向くまでもない。自分より少しだけ背の低い相棒・古河大地がそこに居た。
「――大輔は、もう寝たのか?」
一緒に並んで星を眺める位置について、そう言う。こくりと頷く。
「これから、たいへんだな」
柔らかな笑顔でそう言うと、な、と葉子の顔を覗き込む。
少しはにかんだように笑って、葉子はあぁと頷き、だが、「覚悟の上さ」と答えた。
――俺はこの2か月、ずっとあんたたちと一緒で楽しかったけどな、と彼は言い。その裏の意味は誰もが気づいているが、気づかぬふり。古河は佐々に惚れている……男としても、
だから佐々は、
「艦内時間で暮らす毎日も、もうおしまいだな」
佐々はふぅと窓に背を向けて、古河を見た。あぁと頷きながら、
「当てにしてる−−実際、どうなるか」
辺境惑星の開拓団を受け入れるための開発プロジェクトの責任者のひとり。そんな立場で赴任する。子連れの女ひとり――心細くなっても仕方あるまいのに、佐々は飄々として、それを受け入れているように見えた。
――
大地はいつも、彼女にひれ伏すだけだ、心の中で。そうして、手伝ってやる、でき得る限り。そうしてそれのできる立場にいるのだから。
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