Bon Voyage!

written by 澪子様

 宇宙戦艦ヤマトは、艦の補修を終えて、火星を飛び立った。

 艦は損傷したものの、月から火星へのワープテストは無事成功し、ヤマトは人類で初めて光速を越えた。
これから気の遠くなるほど遠方にあるイスカンダルを目指すには、ワープ航法が欠かせない。その最初の試練を乗り越えたことが、ヤマトの操縦桿を握る島大介の自信につながり、彼の表情は明るかった。

 「俺たちがここで訓練を受けていたのは、ついこの前のことだったのにな。」
 隣の戦闘指揮席に座る古代進が、視界の中で小さくなっていく火星基地を見ながら、独り言のように呟いた。
「この火星で俺たちがイスカンダルからのメッセージカプセルを受け取ってから、何だかいろいろなことがいっぺんに起こっちまって・・・。」
 確かに古代の言うとおりだ、と島も内心同意した。

アイコン

 「基地から発光信号が発せられています。」
 かつて古代と島がいた火星の訓練施設に併設された管制塔で、光が点滅している。
B-O-N V-O-Y-A-G-E-! の繰り返しだ。
「ボン・ボイッジだってさ」
と古代が言うのに、すかさず向こう側から
「古代さん、あれはボン・ヴォワイヤージュと読むんです。フランス語ですよ。」
と砲術補佐の南部がキザな物言いで正す。
 第一艦橋が笑いに包まれている中で、島も苦笑しながら
「航海ご無事で、か」
と古代と自分が過ごした火星の管制官の心配りに感謝した。

背景素材:Silverry moon light
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